ゲーデル解について

ふとゲーデル解について書きたくなったので,簡単なメモ程度に記述をしておこう.ゲーデル解はアインシュタイン方程式の厳密解の一つでクルト・ゲーデルが1949年に論文[1]において発表をした解である.その計量は,

\begin{equation*}
ds^{2}=\frac{1}{2\omega^{2}}\left(-(dt+e^{x}dz)^{2}+dx^{2}+dy^{2}+\frac{1}{2}e^{2x}dz^{2}\right), \ -\infty<t,x,y,z<\infty
\end{equation*}

という形をしている.ここで, \omegaは角速度を表している.この解の面白いのは,時空がある点を中心に自転をしており,中心からの距離が一定以上離れる光速を超える場所では時間的な閉曲線が出来ることである.時間的閉曲線は,ローレンツ多様体の中で時空の物質粒子が突じた状態にあり,出発点に戻ってくる世界線である.つまり,時間について未来と過去は局所的にしか成立せず,はるか未来へいくと過去につながってしまっている世界線である.

研究者の間では,量子重力理論が完成をしたらこのような閉曲線は存在をすることができないと信じている人もいるようである.量子重力理論は未だに完成はしていないので,現時点では実際にタイムトラベルが可能なのかどうかは人類はまだ知らないと言っても間違いではないのではないだろうか.一般相対性理論の解の中にはタイムトラベルの解が含まれているが,実際に自然がそれを許すのか.コメントは避けておこう.

これに関連して以前,タイムトラベルに関してロナルド・L.マレットさんという方がレイザービームを用いた素粒子タイムマシンの原理を発見をしたと聞いたことがある.どのように導出をしたのかの詳細は追うことができていないのだが,論文[2]から引用させていただくと,

\begin{equation*}
\dot{\Omega}=\frac{8\sqrt{2}G\rho}{ac^{3}}
\end{equation*}

という式が重要になるようである.ここで,\rhoは放射の線形密度(radiation linear density)であり,aはビームの長さ(beam length)である.

仮に時刻t_{0}にこのタイムマシンが完成したとすると,tの時刻(ここで,tt_{0}より大きいとする)から時刻t_{0}へは情報が送れるようになるようである.例えば,2030年に完成したら,2045年から2030年へ情報を送ることは可能となるようである.しかし,2030年以前へは情報は送れないようである.もし興味を持った方がいたら詳細については,論文を調べていただきたい.

 
参考文献:
[1] Gödel, K, “An example of a new type of cosmological solution of Einstein's field equations of gravitation”. Rev. Mod. Phys. 21 (3) (1949) 447–450.
[2] R. L. Mallett, “Weak gravitational field of the electromagnetic radiation in a ring laser” Physics Letters A 269 (2000) 214–217.
 

非相対論・相対論的な分布関数

分布関数について記述をする

1次元

非相対論

非相対論的な場合のエネルギーE(v)は,運動エネルギーのみを考える場合,

\begin{equation*}
E(v)=\frac{1}{2}mv^{2}
\end{equation*}

となる.ここで統計力学の知識を思い出して,ある温度 \beta=\frac{1}{k_{b}T}において(ここで,k_{b}ボルツマン定数Tは温度,\betaは逆温度である),ある状態となる確率は,その状態のエネルギーをE_{i}とすると,\exp(-E_{i}\beta)に比例することを思い出す.(詳しくは,統計力学の教科書を参照のこと)

これより,分布関数は,Aを定数として,

\begin{align*}
P_{非相}(v) &=A\exp(-E(v)\beta)\\
                    &=A\exp(-\frac{1}{2}mv^{2}\beta)
\end{align*}

と書くことができることが分かる.以下の規格化の条件より,

\begin{equation*}
\int_{-\infty}^{\infty}dv P_{非相}(v) =1
\end{equation*}
となり,ガウス積分を計算して定数を求めると
\begin{equation*}
A=\sqrt{\frac{m\beta}{2\pi}}
\end{equation*}
となることがわかる.よって,求めるべき分布関数は

\begin{align*}
P_{非相}(v) &=\sqrt{\frac{m\beta}{2\pi}}\exp(-\frac{1}{2}mv^{2}\beta)\\
                    &=v^{-1}\sqrt{\frac{mv^{2}\beta}{2\pi}}\exp(-\frac{1}{2}mv^{2}\beta)\end{align*}

となる.これより,分布関数は\frac{T}{L}の次元を持っていることが分かる.

期待値の計算

試しに期待値を計算をしてみると,

\begin{align*}
  <v> &=0 ,  \\
    <|v|>&= \sqrt{\frac{2}{\pi m\beta}} \\
\end{align*}

となっていることが分かる.

ポテンシャルがある場合

少し特殊な例も計算をしておくこととしよう.1次元の問題で,高さに関する方向に重力ポテンシャルがあるとする.このとき,エネルギーは,
\begin{equation*}
E(z,v_{z})=\frac{1}{2}mv_{z}^{2}+mgz
\end{equation*}

となる.現在考えている問題の範囲を, v_{z}\in(-\infty,\infty) h_{1}\le z\le h_{2}とする.すると,すべての状態に関しての和を考えると,

\begin{align*}
Z(\beta)&=\int_{-\infty}^{\infty}dv_{z}\int_{h_{1}}^{h_{2}}dz\exp(-\beta E(z,v_{z})) \\
                    &=(\frac{1}{m\beta})^{\frac{3}{2}}\frac{\sqrt{2\pi}}{g} \bigl(e^{-mgh_{1}\beta}-e^{-mgh_{2}\beta}\bigr)
\end{align*}
となり,温度を定数としてみた場合に分布関数は,

\begin{equation*}
f(z,v_{z})=\frac{(m\beta)^{\frac{3}{2}}g\exp(-\frac{1}{2}mv_{z}^{2}\beta-mgz\beta)}{\sqrt{2\pi} \bigl(e^{-mgh_{1}\beta}-e^{-mgh_{2}\beta})}
\end{equation*}
となる.

上記のZ(\beta)は次元が入ってしまっているので、分配関数として解釈をする場合、V=\frac{v_{z}}{v_{0}}Z=\frac{z}{l_{0}}などで無次元化をして積分をすればよく,その場合は,

\begin{align*}
Z(\beta)&=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dv_{z}}{v_{0}}\int_{h_{1}}^{h_{2}}\frac{dz}{l_{0}}\exp(-\beta E(z,v_{z})) \\
                    &=(\frac{1}{m\beta})^{\frac{3}{2}}\frac{\sqrt{2\pi}}{l_{0}v_{0}g} \bigl(e^{-mgh_{1}\beta}-e^{-mgh_{2}\beta}\bigr)
\end{align*}

となる.

3次元の場合も書いておくと,分布関数は

\begin{equation*}
f(z,\boldsymbol{v})=(m\beta)^{\frac{5}{2}}v^{2}g\sqrt{\frac{2}{\pi}}\frac{\exp(-\frac{1}{2}m\boldsymbol{v}^{2}\beta-mgz\beta)}{\bigl(e^{-mgh_{1}\beta}-e^{-mgh_{2}\beta}\bigr)}
\end{equation*}

となり,分配関数は

\begin{align*}
Z(\beta)&=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dv_{x}}{v_{0}}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dv_{y}}{v_{0}}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dv_{z}}{v_{0}}\int_{h_{1}}^{h_{2}}\frac{dz}{l_{0}}\exp(-\beta E(z,\boldsymbol{v})) \\                                                                                           &=\bigl(\sqrt{\frac{2\pi}{m\beta}}\bigr)^{3}\frac{1}{mg\beta} \frac{1}{v_{0}^{3}l_{0}} \bigl(e^{-mgh_{1}\beta}-e^{-mgh_{2}\beta}\bigr)\\
                    &=\frac{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}{(m\beta)^{\frac{5}{2}}}\frac{t_{0}^{3}}{l_{0}^{4}g} \bigl(e^{-mgh_{1}\beta}-e^{-mgh_{2}\beta}\bigr)
\end{align*}

となる.ここで,l_{0}t_{0}それぞれ距離と時間の単位を有する何らかの定数とする.(v_{0}=\frac{l_{0}}{t_{0}}とした)

相対論

相対論的な影響を考えた場合のエネルギー E(v)は,

\begin{equation*}
E(v)=\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}
\end{equation*}

となる.同様に分布関数は,

\begin{align*}
  P_{相}(v) &= A\exp(-E(v)\beta)  \\
          &= A\exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right) \\
\end{align*}
と仮定をすることができる.ここで,規格化条件
\begin{equation*}
\int_{-c}^{c}dv P_{相}(v) =1
\end{equation*}
より,定数A
\begin{equation*}
A\int_{-c}^{c}dv \exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right) =1,
\end{equation*}
\begin{equation*}
A=\frac{1}{\int_{-c}^{c}dv \exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right)}
\end{equation*}
となり,分布関数は
\begin{equation*}
P_{相}(v) =\frac{\exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right)}{\int_{-c}^{c}dv \exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right)}
\end{equation*}
と書くことができる.

積分の評価

上記の積分の評価を記載しておく.この積分は収束するわけであるが,簡単に評価をすると,
\begin{equation*}
mc^{2}\leq\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}  \ \rm{for} \  \textit{v} \in(-c,c)
\end{equation*}
となるため,
\begin{equation*}
0 < \int_{-c}^{c}dv\exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right)  <  \int_{-c}^{c}dv\exp(-mc^{2} \beta)
\end{equation*}
これより,
\begin{equation*}
\frac{\exp(mc^{2}\beta)}{2c} < \frac{1}{\int_{-c}^{c}dv\exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right)}  <  \infty
\end{equation*}
となっていることがわかる.よって,分布関数は

\begin{equation*}
\frac{\exp\left(mc^{2}\beta(1-\frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}})\right)}{2c} < \frac{\exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right)}{\int_{-c}^{c}dv\exp\left(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta\right)}  <  \infty , \ \rm{for} \  \textit{v} \in(-c,c)
\end{equation*}

と評価することができる.

2次元

2次元の場合には, \boldsymbol{v}=(v_{x},v_{y})とし, v=\sqrt{v_{x}^{2}+v_{y}^{2}}とし, vの関数として分布関数を表すことを目標とする.

非相対論

\begin{equation*}
\int_{0}^{\infty}dv \ f_{非相,2d}(v)=1
\end{equation*}
となる,関数 f_{非相,2d}(v)を見つける.非相対論的な場合のエネルギーは,

\begin{equation*}
E(\boldsymbol{v})=\frac{1}{2}m(v_{x}^{2}+v_{y}^{2})
\end{equation*}

となり, \boldsymbol{v}=(v_{x},v_{y})の2変数関数としてみた分布関数を f(\boldsymbol{v})=Ae^{-E(\boldsymbol{v})\beta}とする.統計力学を思い出して,すべての状態に関して積分をして,規格化の条件を考えると,
\begin{equation*}
\int_{-\infty}^{\infty}dv_{x}\int_{-\infty}^{\infty}dv_{y}f(\boldsymbol{v})=1.
\end{equation*}
これより, A=\frac{m\beta}{2\pi}が分かる.よって,2変数関数としてみた分布関数は

\begin{equation*}
f(\boldsymbol{v})=\frac{m\beta}{2\pi}e^{-\frac{1}{2}m(v_{x}^{2}+v_{y}^{2})\beta}
\end{equation*}

と書くことが出来る.

 v_{x}=v\cos\theta, v_{y}=v\sin\thetaと変数変換をして, vに関する積分のみの表示をすると,
\begin{equation*}
\int_{0}^{\infty}dv \ mv\beta \exp(-\frac{1}{2}mv^{2}\beta)=1
\end{equation*}
と書くことが出来ることが分かる. \int_{o}^{\infty}dv \ p_{非相,2d}(v)=1となる分布関数を求めたいのだるから,今回の目標としていた関数は

\begin{equation*}
p_{非相,2d}(v)=mv\beta  \exp(-\frac{1}{2}mv^{2}\beta)
\end{equation*}

であることがわかる.

相対論

同様に,相対論的なエネルギーは
\begin{equation*}
E(\boldsymbol{v})=\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v_{x}^{2}+v_{y}^{2}}{c^{2}}}}
\end{equation*}
となり,
\begin{equation*}
\int_{0}^{c}dv \ f_{相,2d}(v)=1
\end{equation*}
となる関数 f_{相,2d}(v)を見つける.

同様の議論により
\begin{equation*}
f_{相,2d}(v)=Av \exp(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta)
\end{equation*}
となり,ここで,
\begin{equation*}
A=\frac{1}{\int_{0}^{c}vdv \exp(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta)}
\end{equation*}
となる.この積分は収束をしていることがわかる.
これをあえてテイラー展開の形で表記をしてみると,
\begin{align*}
\frac{1}{A}&=\int_{0}^{c}vdv \exp(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta)\\
                 &=\frac{c^{2}}{2}\sum_{k=0}^{\infty}(mc^{2}\beta)^{k}\frac{(-1)^{k}}{k!}\{1-\lim_{v\rightarrow c}(1-(\frac{v}{c})^{2})^{-\frac{k}{2}+1}\}
\end{align*}
となる.よって,今考えている分布関数は
\begin{equation*}
f_{相,2d}(v)= \frac{2}{c^{2}}\frac{\exp(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta)}{\sum_{k=0}^{\infty}(mc^{2}\beta)^{k}\frac{(-1)^{k}}{k!}\{1-\lim_{v\rightarrow c}(1-(\frac{v}{c})^{2})^{-\frac{k}{2}+1}\}}
\end{equation*}

と,形式的には書くことはできる.

3次元

非相対論

同様の議論により,3次元の場合の非相対論的な分布関数は,

\begin{align*}
f_{非相,3d}(v)&=v^{-1}(mv^{2}\beta)^{\frac{3}{2}} \sqrt{\frac{2}{\pi}} \exp(-\frac{1}{2}mv^{2}\beta)\\
                 &=(m\beta)^{\frac{3}{2}}v^{2}  \sqrt{\frac{2}{\pi}}\exp(-\frac{1}{2}mv^{2}\beta)
\end{align*}

となる.

相対論

同様の議論により,3次元の場合の相対論的な分布関数は,

\begin{equation*}
f_{相,3d}(v)=Av^{2} \exp(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta)
\end{equation*}
と書くことができ,ここで,
\begin{equation*}
A=\frac{1}{\int_{0}^{c}dv\ v^{2} \exp(-\frac{mc^{2}}{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}\beta)}
\end{equation*}
である.この積分は収束していることがわかる.

数学的補足

数学的に,ガウス積分とそれらに類似した積分

\begin{equation*}
\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\alpha x^{2}}dx=\sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\int_{0}^{\infty}xe^{-\alpha x^{2}}dx=\frac{1}{2\alpha} 
\end{equation*}
\begin{equation*}
\int_{0}^{\infty}x^{2}e^{-\alpha x^{2}}dx=\frac{1}{4\alpha} \sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}
\end{equation*}

を順に,1次元,2次元,3次元の非相対論的な分布関数の導出に用いる.

外部リンク

関連する数学的な内容がまとめられているリンクを貼付しておく.

指数関数の爆発と収束性について:

https://manabitimes.jp/math/918

広義積分について:

https://mathlandscape.com/improper-integral/

ガウス積分の導出について:

https://mathlandscape.com/gauss-integral/

ガウス積分の周辺の積分について:

https://mathwords.net/gausssekibun

相対論的な座標変換

(2+1)次元の相対論的な座標変換を考える.

 

 

(2+1)次元のローレンツ変換

 \tanh \theta =\frac{v}{c}として, v_{x}=v\cos \varphi v_{y}=v\sin \varphiとする. x方向に v_{x} y方向に v_{y}で動く座標系から同一の粒子を記述した場合の相対論的な効果を考えた座標変換を考える.

 S系の座標を \varphiだけ反時計回りに回転させた座標系 S^{ \prime}から記述した座標に変換する行列 R(\varphi)は,

となり,並びにローレンツ変換を,

とする. S^{ \prime}系から x^{ \prime}方向に vで動いている慣性系 S^{ \prime\prime}を考え,更にその慣性系から座標を \varphiだけ時計回りに回転させた座標系 S^{ \prime\prime\prime}に変換する行列を計算すると,

となる.

 

ローレンツ変換の合成を比較する

 L(\theta_{1})L(\theta_{2}) L(\theta_{2})L(\theta_{1})との比較.

 L(\theta_{1})及び, L(\theta_{2})をそれぞれ

とすると,

並びに,

となり,これらの値は一致しない.しかし,

 L(\theta_{1})L(\theta_{2})={}^t\! (L(\theta_{2})L(\theta_{1}))

となり,転置をしたものに等しくなっていることがわかる.

 

等号の持つ機能の分類

等号の機能

モチベーション

数学や物理,計算機科学で使われている等号「 =」について分類をすることにする.今回,このようなメモを書くモチベーションは,SNS上で掛け算の順序に関する論争が起きており,個人的に等号について整理をしてみたくなったからである.掛け算の順序に関しては,「超数学」と言われる分野の知識が関連しており,この問題に関して正確に記述をすることができないのであるが,一旦普段扱っている「等号」にはどのような意味があるのかを考えてみて,簡単に分類をしておくこととする.

等号の機能の種類

普段物理学や数学の問題を扱っているときに,何気なく等号を使っていることがある.その意味は,「右辺と左辺が等しい」という意味であるのだが,よく考えてみると,どのような意味において等しいかにニュアンスの違いがあることに気が付く.また,パイソンなどのプログラミングを行なってみると,「=」と書いた場合と,「==」と書いた場合で,異なる意味を有していることが分かる.前者は,「左辺と右辺がものとして同じ」ということを意味しており,後者は「左辺の出力値と右辺の出力値が等しい(ものとしては,異なっていてもよい)」ということを意味している.プログラミングにおいては,このあたりを区別をする必要があるのであるが,日常的に人間が数学や物理の問題を考える上では書き分けなくても,人はこれらの違いを上手に認識をすることが出来ているようである.このような認識をする能力を,物事をメタにみる能力とでも呼ぶのであろうか.

今回は等号の機能を,「同等」であることを意味する場合,「(何らかの視点において)等価」であることを意味する場合(例,物理的に等価),「出力値が同じ」であることを意味する場合に分類して考察をすることとする.他にも,等号の機能,意味,種類はあるかもしれないが,それはまた気が付いたら書き足してゆくこととしよう.

ここで,同等(ものとして同じ)場合には、通常の等号「 =」を用い,(~的に)等価な場合は「 =_{~}」,出力値が同じ場合については,「 ==」や「 val(a)=val(b)」,「 =_{output}」等を用いて,意味を区別して表記をしてみることとする.以下,いくつか思いついた例を列挙することにより,意味を考えてみることとする.

 

様々な例

長方形の紙

例えば,「 3 \, \mathrm{cm} \times 5 \,\mathrm{cm}」という式と「 5 \,\mathrm{cm} \times 3 \, \mathrm{cm}」という式を考えた場合, 3 \, \mathrm{cm} \times 5 \,\mathrm{cm}は縦の長さが 3 \, \mathrm{cm}で横の長さが 5 \, \mathrm{cm}ということを意味しており(今回は1つ目に書いたものが縦の長さで,2つめが横の長さとする),一方 5 \, \mathrm{cm} \times 3 \,\mathrm{cm}は縦の長さが 5 \, \mathrm{cm}で横の長さが 3 \, \mathrm{cm}を意味しており,ものとしては異なるので,

 3 \, \mathrm{cm} \times 5 \,\mathrm{cm}\ne 5 \,\mathrm{cm} \times 3 \, \mathrm{cm}\

となる.

しかし,一方を90度回転させるともう一方と同じになるため,これらは物理的には等価であると言える.よって,

 3 \, \mathrm{cm} \times 5 \,\mathrm{cm}=_{物理} 5 \,\mathrm{cm} \times 3 \, \mathrm{cm}\

と書くことができる.

また,これらが出力する値を面積とし,今回は aの出力値を val(a)と書くことにすると,

 val(3 \, \mathrm{cm} \times 5 \,\mathrm{cm})=val(5 \,\mathrm{cm} \times 3 \, \mathrm{cm})

あるいは,

 3 \, \mathrm{cm} \times 5 \,\mathrm{cm}== 5 \,\mathrm{cm} \times 3 \, \mathrm{cm}\

と,書くことができる.

 

速さや長さ:

 3 \,\mathrm{m/s}\times10 \,\mathrm{s}」という式と、「 3 \,\mathrm{m}\times10」という式を比較する,

これは,ものとしても異なり,物理的にも等価ではないが,出力値は同じになるため,

 3 \,\mathrm{m/s}\times10 \,\mathrm{s}\ne 3 \,\mathrm{m}\times10

かつ,

 3 \,\mathrm{m/s}\times10 \,\mathrm{s}\ne_{物理的} 3 \,\mathrm{m}\times10

だが,

 val(3 \,\mathrm{m/s}\times10 \,\mathrm{s})= val(3 \,\mathrm{m}\times10)

あるいは,

 3 \,\mathrm{m/s}\times10 \,\mathrm{s}== 3 \,\mathrm{m}\times10

ではある.

物理学における等号

例えば静止エネルギーを意味する有名な式において, "E=mc^{2}"と書かれる式は,厳密には右辺と左辺の意味は異なる.仮に,エネルギーをEとした場合、エネルギー値は区別をして val(E)と書き,

 val(E)= val(mc^{2})

などどすべきであろう.(ここで, val(mc^{2})=val(m)(val(c))^{2}とする.)あるいは,

 E== mc^{2}

として本来は区別するべきなのかもしれない.普段は,エネルギーとエネルギー値を同一視して,かつ出力値が同じことを,ものとして同じと認識しかねない方法で記述をして議論をしていることになる.これが,計算機の場合,2つの等号,「 =」と「 ==」を区別をして記述をしないといけない. E= mc^{2}と書いてしまうと, Eという記号は, mc^{2}を意味していると認識してしまい,それが別のエネルギーという概念であると認識することは計算機にはこのような記述方法ではできないようである.一方,人間の認知の場合特に区別をせずとも通じ合えるのは凄いことであると思う.おそらく,人はこれらを認識をするときに,何らかの欠損した部分を自然に補って認識を自然なものにする能力が備わっているようである.ある自由意志の研究者の研究がを伺ったことがあるが,景色などの視覚情報に対しての認知や認識も,実は自動的に補足されており,人間の意識には自然に映るようになっているようである.

数学における等号

数学における等号の扱いかたを少しだけ振り返ると,例えばアーベル群などを意味する場合の記載方法は,

 \varphi(a,b)=\varphi(b,a)

などと書くが,これは \varphi(a,b) c\in Gと直接対応させている訳で,出力値が同じという意味ではないので,ものとして同じという意味の等号と見なしてよいだろう.

まとめ

等号は「同等」,「等価」,「出力値が同じ」などを意味する場合に,区別せず表記されているので,時には意識的に分類をしてみることにも意味があるのではとは思う.このように,等号が果たす役割を学生の頃に習っただろうか.中学生や高校生の時期に本来であれば,考えた方が良い問題なのかもしれないし,もしかしたら授業の中で習っていて,忘れているだけなのかもしれない.このような基礎的な部分の記号の意味は,普段日本語を話しているときに文法を意識をせずとも多くの用法を使っているように,数学や物理学においても無意識的に行なっている.この,無意識的に行われている部分,当たり前に行われている部分を,言語化して意識をしてみることこそ研究をする上では大切になって,何か新しい発見につながるのではないのかとも思う.

しかし,一方でこのような基礎の基礎の部分について気にしすぎるのは,普段数学や物理学の問題を考える上では障害となる可能性もある.日本語で会話をする時に,毎回文法の解説をするよう要求されていたら,肝心の話しの中身に集中ができなくなってしまう.幸い人間はこのような文法的な部分は無意識的に扱って,本当大切な意味の部分に集中して議論をすることが可能である能力を有しているようである.普段はあまり意識をする必要性はないのかもしれないが,折を触れてこのようなことを意識をしてみるのも良いのではとは思う.

 

                    

スピングラス模型の分布関数の一般化

スピングラス模型における分布関数を少しだけ一般化をする.

分布関数の復習

通常の分布関数はそれぞれ以下の通りである.

 \pm J模型:

 P(J_{ij})=p\delta(J_{ij}-J)+(1-p)\delta(J_{ij}+J)  

ガウス模型:

 P(J_{ij})=\frac{1}{\sqrt{2\pi {J^{\prime}}^{2}}}\exp\left(-\frac{(J_{ij}-J)^{2}}{2{J^{\prime}}^{2}}\right)  

これは,中心が J,分散が {J^{\prime}}^{2}の模型となる.

簡単な一般化

デルタ関数

デルタ関数について、以下の極限として一旦記述をすることとする.

 \delta(k-k_{0})=\lim_{\alpha\rightarrow 0}\frac{1}{\sqrt{2\pi\alpha}}\exp\left(-\frac{(k-k_{0})^{2}}{2\alpha}\right) 

参考文献:

量子力学〈1〉 (基礎物理学選書5A)、小出 昭一郎著

 

分布関数の一般化

2値ガウス模型の分布関数を以下の通りとする.

 P(J_{ij})=p\frac{1}{\sqrt{2\pi {J^{\prime}}^{2}}}\exp\left(-\frac{(J_{ij}-J)^{2}}{2{J^{\prime}}^{2}}\right)+(1-p)\frac{1}{\sqrt{2\pi {J^{\prime}}^{2}}}\exp\left(-\frac{(J_{ij}+J)^{2}}{2{J^{\prime}}^{2}}\right)

デルタ関数の上記の極限より J^{\prime}\rightarrow 0 \pm J模型となる.また, p=1のとき中心が J,分散が {J^{\prime}}^{2}の模型となり, p=0のとき中心が -J,分散が{J^{\prime}}^{2}の模型となり, \pm J模型とガウス模型の双方を含んだ分布関数となっている.この分布関数において, p=\frac{1}{2}の場合などは,果たして何を意味しているのであろうか.

 

代数系との対応

代数系と簡単な対応をつけておくと,スピンの数がNの場合の \pm J模型(イジング模型)の状態\boldsymbol{S}=(S_{1},\cdots,S_{N})\in \{-1,1\}^{N}と,Xを有限集合(ここで,|X|=N)としたときの冪集合\mathfrak{P}(X)の元A \in\mathfrak{P}(X)は対応をつけることができる.更に\boldsymbol{J}=\{J_{ij}\}と,ある2つの元の演算を可換か非可換かを対応付けることもできる.すなわち,(\boldsymbol{S},\boldsymbol{J})\leftrightarrow (A,\{\cdot_{ij}\}), A \in\mathfrak{P}(X)と対応をさせることができる.        

例えば,X=\{x_{1},x_{2},x_{3}\}とするとき,X \in \mathfrak{P}(X)\{1,1,1\}\in\{-1,1\}^{3}を対応させ,\emptyset \in \mathfrak{P}(X)\{-1,-1,-1\}\in\{-1,1\}^{3}を対応させるなどすればよい.(x_{i}\in A \in\mathfrak{P}(X)のときS{i}=1と対応させている)また,x_{i}x_{j}=x_{j}x_{i}のとき、J_{ij}=1x_{i}x_{j}\neq x_{j}x_{i}のとき、J_{ij}=-1などと対応をさせればよい.

研究課題 

  1. 上記で求めた分布関数                                                                              \begin{equation}P(J_{ij})=p\frac{1}{\sqrt{2\pi {J^{\prime}}^{2}}}\exp\left(-\frac{(J_{ij}-J)^{2}}{2{J^{\prime}}^{2}}\right)+(1-p)\frac{1}{\sqrt{2\pi {J^{\prime}}^{2}}}\exp\left(-\frac{(J_{ij}+J)^{2}}{2{J^{\prime}}^{2}}\right)\end{equation}における,西森ラインを求めよ. \pm J模型とガウス模型の西森ラインは,それぞれ以下の通りである.                                 \pm J模型: P(J_{ij})=p\delta(J_{ij}-J)+(1-p)\delta(J_{ij}+J) ,\begin{equation}
     J\beta=\frac{1}{2}\log\frac{p}{1-p}
    \end{equation}                                ガウス模型: P(J_{ij})=\frac{1}{\sqrt{2\pi {J^{\prime}}^{2}}}\exp\left(-\frac{(J_{ij}-J)^{2}}{2{J^{\prime}}^{2}}\right) , \begin{equation}
      J\beta=(J^{\prime}\beta)^{2}
    \end{equation}である.ノーテーションに注意せよ.
  2. 上記では異なる中心を有する2つの分布関数により、新たな分布関数を構成した.N種類の異なる中心を有する分布関数においても類似の議論をし、その物理的な意味について考察せよ.
  3. スピングラス理論の西森ラインと多重三角関数論における消滅定理の類似性と関係性について論ぜよ.統一的に説明可能であれば、多重化と捉えることの出来る一連の一般化について、多重化の一般理論を構築せよ.
  4. イジング模型からスピングラス模型への一般化を,三角関数から多重三角関数への一般化と,理論の持つ自由度に着目して説明せよ.具体的には,例えば変数をs\leftrightarrow \beta x\leftrightarrow h\boldsymbol{\omega} \leftrightarrow \boldsymbol{J}などと対応させる.
  5. 黒川テンソル積を用いて,統計力学の可解模型の一般化を解釈できるかについて論ぜよ.つまり,三角関数以外の場合における多重化を扱う問題を考えよ.

2次元の極座標表示の運動方程式

ニュートン運動方程式

 \frac{d\boldsymbol{p}(t)}{dt}=\boldsymbol{F}(t)

これを2次元空間(2+1次元)において極座標表示した場合には,以下の通りの表記となる.

質量が一定の場合:

 m\{(\ddot{r}-r\dot{\theta}^{2})\boldsymbol{e}_{r}+(2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta})\boldsymbol{e}_{\theta}\}=\boldsymbol{F}(t)

質量が時間変化する場合:

 \{\dot{m}\dot{r}+m(\ddot{r}-r\dot{\theta}^{2})\}\boldsymbol{e}_{r}+\{\dot{m}r\dot{\theta}+m(2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta})\}\boldsymbol{e}_{\theta}=\boldsymbol{F}(t)

「はてなTex記法」というものに,少しづつ慣れてゆこう.